前記事の教材 図書カード:トロツコには方言がある。
方言についても、教科書に説明がある。
そこで、方言についての授業で何を言うか、調べたことをメモしておく。
- そもそも方言とは?
- 方言の特徴
- 1 存在形態
- 2 公式または不特定多数へのコミュニケーションでは使われない
- 3 方言の使用は任意
- 4 集団内部での伝達に便利である
- 5 方言の使用はある集団に属していることの表明にもなる
- 方言によるコミュニケーション
- 方言の習得
そもそも方言とは?
少数言語と国際法 : 琉球語・アイヌ語を素材にして | 学術機関リポジトリデータベース
p391の注4によると、
方言とは、○○語などの
「抽象的・総称的言語が、地域ごとに現れた具体的な姿」
言語学的には相互理解可能であれば方言に分類され、
政治的には政府や住民などの言語共同体の意志により方言であるかが定められる。
↓
つまり、日本語という抽象的な言語は実際に存在せず、地域や集団ごとの方言が存在するということだろう。
↓
この具体的言語と抽象的言語の話は、別の例でたとえてみると、
・AさんやBさんがいるだけで、人間そのものが歩いているのではない。
・犬や猫がいるだけで、犬や猫を超えた抽象的な動物そのものはいない。
のと似たようなもの?
ひとまず、
方言
=特定の地方で使われる地域方言
+特定の集団(年齢、性別、階層、職業など)で使われる社会方言
映画が導く言語学 2 「マイ・フェア・レデイ」と「舞妓はレデイ」|高橋英光
も参考。
方言は共通語とは異なる文法や語彙を持つ。『トロッコ』の
「あんまり帰りが遅くなるとわれの家でも心配するずら。」
文法:ずら=~だろう 共通語とは異なる推量の助動詞。
語彙:われ=あなた 共通語とは異なる意味の名詞。
方言の特徴
1 存在形態
方言に留まる、共通語になる、死語になる、のいずれか。
若者語の場合、
「おこ」は社会方言、「就活」は今や共通語、「チョベリバ」は死語。
2 公式または不特定多数へのコミュニケーションでは使われない
方言は公の場での使用や集団外の人との伝達には不向き。
例
面接 公式の場面だから、たとえ面接官が同郷でも方言で話さない。
テレビは、公式かつ不特定多数の人への伝達だから共通語。
非公式な会話でも、同郷出身でない人と話すときは共通語。
3 方言の使用は任意
ある地方やある集団が必ずいつも地域方言・社会方言を使うとは限らない。
年齢、身分、性別、職業、場の雰囲気、個人の考えにより、使用しないこともある。
例 友人とは方言で話し、TPOに合わせて共通語を話す。
この場面では方言を話すべきだという規範はない。(共通語はある?)
4 集団内部での伝達に便利である
例 タクシー用語
共通語による説明的・冗長な表現ではなく、集団独自の簡潔な単語を使うことで、
業界特有の現象を迅速かつ的確に表現。
5 方言の使用はある集団に属していることの表明にもなる
小説・ドラマでよくある事例
・帰郷して、家族や友人と方言で話すことで、自分の集団に戻ってきたことを確認する。
・登場人物の属性を表す記号にもなる。
例 セリフの方言で登場人物の出身地を示す。
以下はブログ主の疑問。
方言によるコミュニケーション
異なる集団間で方言によるコミュニケーションはいかに可能か?
「机吊りするで~」と先生が言う。生徒が机を教室の後ろに運ぶ。
それを見て、転校生も同じ行動をする。
方言が指示する対象を、その方言を知らない人も理解できたら、方言は通じる。
脱線するが、そもそも、
言葉が通じるとはどういうこと?
方言の習得
方言は発音の習得が大変。場合によるが、文法はあまり苦労しないはず。
英語は発音と文法と単語のすべてが必要。
↓
言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか -今井むつみ/秋田喜美 著|中公新書|中央公論新社
3章でも引かれる、チャールズ・ホケットの言語の大原則と関係?
以下を参考。
このブログで伝統的伝承、学習可能性と訳された原則は、
前掲書では継承性、習得可能性と訳されている。(訳語の差)
ひとまず以上。